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    APS工場 IWC ポルトギーゼ・オートマティック42「イヤー・オブ・ザ・ホース」を検証:馬型ローターと7日間パワーリザーブの完成度

    2026年の午年を象徴する馬のモチーフを、機械式時計の動きそのものへ取り込んだのが、IWC ポルトギーゼ・オートマティック42「イヤー・オブ・ザ・ホース」である。バーガンディカラーのダイアルにゴールドトーンの針とアプライド・インデックスを合わせ、シースルーバック側には駆ける馬をかたどったローターを配置する。

    APS工場の2026年モデルは、この特徴的なデザインを42.3mmケースへ落とし込み、時・分、スモールセコンド、日付、パワーリザーブ表示を実際に作動させる構成としている。ムーブメントについては、従来型ポルトギーゼに搭載されたCal.52010を分解・解析し、約80%の構造再現を目標に開発したと案内されている。

    ただし、2026年のIWC公式モデルRef.IW501709が搭載するのは新世代のCal.52011であり、ケースも直径42.4mm、厚さ13mmである。APS版の42.3mm×14.1mmという寸法とCal.52010ベースの構造は、従来型ポルトギーゼ・オートマティックの設計を基礎に、午年仕様のダイアルと馬型ローターを組み合わせたものと見るのが正確だ。

    本稿では、祝祭的なイメージだけで評価せず、ダイアル構成、ケース寸法、馬型ローター、7日間パワーリザーブ、Cal.52010スタイルのムーブメント、ストラップまでを第三者視点で検証する。

    主要スペック

    モデル:IWC ポルトギーゼ・オートマティック42「イヤー・オブ・ザ・ホース」仕様
    製造:APS工場
    ケース:ステンレススティール、直径約42.3mm、厚さ約14.1mm
    ダイアル:バーガンディカラー
    表示:時、分、スモールセコンド、日付、パワーリザーブ
    ムーブメント:APS製Cal.52010スタイル自動巻き
    パワーリザーブ:公称約7日間
    風防:反射防止コーティング付きサファイアクリスタル
    ケースバック:サファイアクリスタル・シースルーバック
    ローター:駆ける馬をモチーフとした360度回転式ローター
    ストラップ:イタリアンカーフレザー
    クラスプ:IWCスタイル・フォールディングクラスプ
    防水:個体ごとの防水試験を推奨
    保証:12ヶ月

    公式の午年モデルとAPS版は内部構造が異なる

    最初に整理しておきたいのが、APS版とIWC公式モデルの関係である。IWCは2026年の午年に向けて、ポルトギーゼ・オートマティック42「イヤー・オブ・ザ・ホース」Ref.IW501709を500本限定で発表している。

    公式モデルは直径42.4mm、厚さ13mmのステンレススティールケースを採用し、両面にボックス型サファイアクリスタルを備える。ムーブメントはCal.52011で、毎時28,800振動、2つの香箱による168時間のパワーリザーブ、ペラトン自動巻き機構を持つ。

    これに対し、APS版の公称寸法は42.3mm×14.1mmで、ムーブメントはCal.52010を解析した改装機として説明されている。この寸法は旧世代のポルトギーゼ・オートマティックに近く、公式の午年モデルよりケース側面に厚みが出る。

    したがって、APS版を評価する際は「公式Ref.IW501709の内部まで完全に複製したモデル」と考えるべきではない。従来型52010系の機械構成を利用しながら、2026年モデルの色彩と馬型ローターを再現したレプリカ時計という位置づけが適切である。

    バーガンディダイアルは色の深さが重要

    午年モデルの第一印象を決めるのは、深みのあるバーガンディダイアルである。赤を強く出しすぎると鮮やかなワインレッドになり、暗すぎるとブラウンやブラックに近く見える。理想的なのは、正面では落ち着いた赤紫に見え、斜めから光を受けたときに赤のニュアンスが浮かび上がる発色だ。

    ダイアル上には、細身のアラビア数字、レイルウェイ式ミニッツトラック、リーフ針が配置される。ゴールドトーンの針とインデックスはバーガンディとのコントラストが強く、ポルトギーゼらしいクラシックな輪郭を作る。

    確認したいのは、数字の立体感だけではない。12時と6時を結ぶ中心線、3時位置のパワーリザーブ表示、9時位置のスモールセコンド、6時位置の日付窓が左右対称に配置されているかが重要になる。

    特に6時位置の日付窓は、開口部の四辺、数字の上下位置、ディスクの色を確認したい。数字が窓の中央からずれていると、情報量の少ないダイアルだけに目立ちやすい。

    パワーリザーブとスモールセコンドの対称性

    ポルトギーゼ・オートマティックの象徴は、3時位置のパワーリザーブ表示と9時位置のスモールセコンドが作る左右対称のレイアウトである。

    パワーリザーブ針は、巻き上げに伴って徐々に上昇し、ゼンマイがほどけるにつれて連続的に下がる必要がある。満巻き付近で針が目盛りを越えないか、停止直前に下限へ正しく到達するかが確認ポイントとなる。

    9時位置のスモールセコンドは、針が文字盤と平行に回転し、目盛りに対して上下左右へ振れないことが重要だ。サブダイアルの同心円模様が均一であれば、光の反射が滑らかに広がり、メインダイアルとの奥行きの差も明確になる。

    馬型ローターは裏側の主役

    このモデルで最も分かりやすい特徴が、シースルーバックから見える馬型ローターである。一般的な扇形ローターではなく、駆ける馬の輪郭を回転錘へ取り込み、腕の動きに合わせて360度回転する。

    馬の頭部、脚、たてがみ、胴体のラインが細かく彫られ、単なる平面的な切り抜きに見えないことが完成度を左右する。角の処理が粗い場合は、拡大した際にバリや不均一な面が見えやすい。ゴールドトーンの色味も、黄色が強すぎると軽く見えるため、ケースバック越しの反射まで確認したい。

    一方、装飾性を高めたローターでは、重量配分と回転バランスも重要になる。時計をゆっくり傾けた際にローターが滑らかに動くか、特定の角度で止まりやすくないか、ケースバックへ接触する音がないかを見る必要がある。

    馬型ローターは縁起を表す装飾であると同時に、自動巻き機構を駆動する実用品でもある。見た目の彫刻だけでなく、巻き上げ効率を維持できているかまで含めて評価すべき部品だ。

    42.3mm×14.1mmケースの存在感

    APS版のケースは直径約42.3mm、厚さ約14.1mmとされる。広いダイアルと細いベゼルによって、数値以上に大きく見えやすい。ポルトギーゼ特有の長いラグも加わるため、手首上ではケース径だけでなく、ラグ先端までの収まりを確認したい。

    公式の2026年午年モデルは厚さ13mmまで薄型化されているため、APS版には約1.1mmの差がある。この違いは正面写真では分かりにくいが、横から見るとミドルケースとケースバックの高さに現れる。

    外装仕上げでは、ベゼルとケース側面のポリッシュ、ラグ上面のサテン仕上げ、各面の境界線が評価点になる。ポリッシュ面だけを強く磨くとエッジが丸くなり、ポルトギーゼの端正なケースラインが崩れる。ラグ4本の角度と厚さが揃っているかも確認したい。

    前後サファイアクリスタルの透明感

    APS版は前面とケースバックの双方にサファイアクリスタルを採用し、前面には反射防止コーティングが施されている。バーガンディダイアルは映り込みの影響を受けやすいため、風防の透明度は色の再現にも関係する。

    反射防止層が強すぎると、斜めから見た際に青紫色の反射がダイアルへ重なり、本来のバーガンディが別の色に見えることがある。自然光、白色照明、暖色照明の三つで色の変化を比較すると判断しやすい。

    ケースバック側では、クリスタルの内側に埃や指紋がないか、馬型ローターと風防の間に十分なクリアランスがあるかを確認したい。

    Cal.52010スタイル改装機の見方

    APS工場は、オリジナルのCal.52010を分解し、多数の試作とデータ分析を通じて、約80%の構造一致を目標に開発したと説明している。ただし、この割合はメーカー側の公称表現であり、部品点数、輪列、香箱、ペラトン機構のすべてが独立検証された数値ではない。

    ムーブメントを見る際は、装飾プレートの形だけで判断せず、実際の操作と作動を確認する方が現実的だ。リューズの手巻き感、時刻調整時の針の遊び、日付送りのクリック感、ローターの回転音、満巻き後のスリップ動作までが評価対象になる。

    また、公式の午年モデルはCal.52011を搭載している。APS版のCal.52010スタイル機は、見た目と基本機能を近づけた改装ムーブメントであり、2026年公式モデルと同一構造の完全クローンではない。この違いを明記したうえで、実用性と外観再現を分けて評価する必要がある。

    7日間パワーリザーブは実測が必要

    7日間パワーリザーブは、この時計の機能面で最大の特徴である。公称値を確認するには、手巻きで十分に巻き上げ、パワーリザーブ針が上限へ到達した時点を記録し、その後は静置して停止までの時間を測る。

    確認すべきなのは、単に約168時間動き続けるかだけではない。残量表示の進み方、後半の歩度変化、振り角の低下も重要になる。停止までの時間が長くても、最終日の精度が大きく崩れる場合は、実用上の評価を分けて考えるべきだ。

    さらに、自動巻きだけで満巻きまで到達するかも確認したい。馬型ローターの重量配分が通常ローターと異なる場合、装飾の完成度と巻き上げ効率が必ずしも一致するとは限らない。

    イタリアンカーフとフォールディングクラスプ

    APS版にはイタリアンカーフレザーストラップと、IWCスタイルのフォールディングクラスプが組み合わされる。カーフはアリゲーターストラップより柔らかく、初期状態から手首へなじみやすい。

    品質確認では、表面の型押しだけでなく、側面のコバ処理、ステッチの間隔、ラグ付近の厚さ、裏材の接着状態を見る。ストラップの左右で穴位置や長さがずれていると、クラスプを閉じた際に時計が手首の中心から外れやすい。

    フォールディングクラスプは、開閉時のクリック感、ロック後の遊び、エッジ処理が重要だ。馬型ローターを含むケース本体に重量があるため、クラスプが確実に固定され、ストラップが手首上で回転しにくいことが装着感につながる。

    カレンダー操作と防水性

    日付をクイックチェンジする際は、カレンダー機構が作動する深夜帯を避ける必要がある。安全を優先するなら、時分針を午前6時前後へ移動してから日付を調整し、その後に現在時刻を合わせる方法が無難だ。

    前後にサファイアクリスタルを備えていても、防水性能が自動的に保証されるわけではない。リューズ、裏蓋パッキン、風防周辺の組み付けは個体ごとの差が出るため、水に触れる前に圧力試験を行うことを推奨する。

    レザーストラップも水分と汗の影響を受けやすい。防水試験を通過した個体であっても、入浴、サウナ、水泳での使用は避けた方がよい。

    APS版「イヤー・オブ・ザ・ホース」の実機チェックポイント

    1. バーガンディダイアルに色ムラや塗装の粒がないか
    2. ゴールドトーンの数字、インデックス、針の色味が揃っているか
    3. 3時、6時、9時の各表示が共通の中心線上に配置されているか
    4. 日付数字が窓の中央に収まり、切り替え途中で止まらないか
    5. パワーリザーブ針が巻き上げ量に合わせて滑らかに動くか
    6. スモールセコンド針が文字盤と平行に回転するか
    7. 馬型ローターの彫刻にバリや粗いエッジがないか
    8. ローターが360度滑らかに回転し、ケースバックへ接触しないか
    9. フル巻き上げから停止まで約7日間に近い持続時間があるか
    10. ケース径42.3mm、厚さ14.1mm前後の寸法が大きく外れていないか
    11. ストラップのステッチ、コバ、クラスプの固定状態に問題がないか
    12. 組み立て後の防水試験を通過しているか

    総評:馬型ローターだけでなく52010と52011の違いを見る

    APS工場のIWC ポルトギーゼ・オートマティック42「イヤー・オブ・ザ・ホース」は、バーガンディダイアルと馬型ローターによって、2026年午年モデルの個性を分かりやすく再現した一本である。ローターが腕の動きに合わせて回転するため、静止した装飾よりもテーマ性を強く感じられる。

    一方、技術面では公式Ref.IW501709との差を把握する必要がある。公式モデルは42.4mm×13mmのケースとCal.52011を採用するのに対し、APS版は42.3mm×14.1mmで、Cal.52010を基礎とする改装ムーブメントである。ケース厚と内部構造は同一ではない。

    したがって、このモデルの完成度は「構造一致率80%」という宣伝値だけでは判断できない。7日間パワーリザーブの実測、日付と残量表示の作動、ローターの巻き上げ効率、ケースの厚さ、ダイアル各部のセンタリングを総合して評価するべきだ。

    午年を象徴する華やかな外観と、ポルトギーゼらしい左右対称の機能配置を一つにまとめた点は魅力的である。APS版の本質は、馬のモチーフそのものより、それを7日巻きの大型自動巻きモデルへどこまで破綻なく組み込めているかにある。

    FAQ

    APS版はIWC公式のRef.IW501709と同じサイズですか?

    完全には同じではありません。APS版は公称約42.3mm×14.1mm、公式モデルは42.4mm×13mmです。直径は近いものの、APS版の方が約1.1mm厚い構成です。

    APS版はCal.52011を搭載していますか?

    いいえ。APS工場の資料では、従来型のCal.52010を分解・解析して開発した改装ムーブメントとされています。公式の2026年午年モデルが搭載するCal.52011とは内部構造が異なります。

    構造一致率80%はどのように確認できますか?

    80%はAPS工場側の公称値です。厳密に判断するには、ムーブメントを分解し、輪列、香箱、自動巻き機構、部品配置を比較する必要があります。外観写真だけで数値を証明することはできません。

    馬型ローターは実際に自動巻きへ使われますか?

    はい。装飾部品であると同時に、腕の動きによって360度回転し、自動巻き機構を駆動するローターとして作動します。滑らかな回転と巻き上げ効率の確認が必要です。

    7日間パワーリザーブは必ず達成できますか?

    約7日間は公称値です。実際の持続時間は巻き上げ量、ムーブメント調整、姿勢、潤滑状態によって変わるため、フル巻き上げから停止までの実測が必要です。

    日付はいつでも調整できますか?

    深夜のカレンダー切り替え時間帯にクイックチェンジを行うと、送り機構へ負荷がかかる可能性があります。時分針を午前6時前後へ移動してから調整する方法が安全です。